臨床喫茶学;ケガレ・ケ・ハレの生活律で健康で文化的な生活を! ・・1

もう一つの健康情報・・「民間療法のウソとホント」(蒲谷茂著、文春新書)


 本日(9月20日、2011年)発売の蒲谷茂による「民間療法のウソとホント」は、漢方を含む民間療法、健康食品について一般向けに解説した本ですが、大変良心的で素晴らしいインパクトのある、役に立つ新書本だと思います。

 日頃、既に、話題の健康食品を愛用しておられたり、親しんでいる人達には、早々に一読をオススメです。

 いわゆる、暴露本ではありません。

 プラセボ効果(偽薬、偽健康食品、民間療法)で3分の一、つまりは、30%以上の人達が、良いような気がする、効くというような良心的で知っておくべき事実まで解説しているところが親切だ!

 また、NHKテレビ番組「ためしてガッテン」の問題点も指摘しています。

 健康食品や健康雑誌ビジニスの走り、からくりとなった紅茶キノコから始まり、取り上げられているのは、漢方薬アガリスククロレラ、ニンニク、黒酢、コラーゲン、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、花粉症とアトピー対策などの最近話題の健康食品、サプリメント商品について取り上げられ、解説されています。


 それぞれの有効性などについての状況、科学的根拠について、ネット・WEB上で検索できる情報を紹介しています。

 皆さんも、参考にすべき検索サイトだと思います。

 有料なWEBサイトである検索サイト医中誌(医学中央雑誌)を中心に著者は紹介していますが、私はこのサイトは利用していません。

 そのほかに取り上げている検索サイトは、私も愛用している、いずれも信頼性の高い無料のWebサイトです。

 国立健康・栄養研究所が発する『「健康食品」の安全性、有効性情報』と英語のサイトのPub Med(パブメド)です。

 願わくば、著者は、こちらのWeb情報をもっと中心にして紹介してもらいたかったと思います。


 Pub Medについては、私が、取り上げて紹介してきた論文を読むサイトですが、言語学鎖国状態のために、我が国の多くの人達がアクセスしないために、紹介の蒲谷茂本で指摘している健康雑誌や各種メディアが医療界を巻き込む協調的タイアップした健康ビジニスの氾濫を容易ならしめている誘引となっているのだと思います。

 専門誌や学会発表といっても色々あり玉石混合状態であり、情報の質が問題で、まるで国際的に通用しないものも少なくないのです。

 蒲谷茂もPub Medを中心にしたら本が書けなくなっていたかも知れません。

 蒲谷本は大変良いオススメ本であり、後半で『民間療法が「効く」理由』と『民間療法の見分け方』を取り上げています。

 プラセボ効果(偽効果)のみならず、薬の効能、有効性を調べる試験法たる治験についても丁寧に解説しています。

 細胞レベルや動物実験での作用・効果、効き目・キキメは、人・人間レベルでは効く・キクとは言えないことのみならず、人レベルでの有効性を証明する治験や疫学的な調査・研究レベルの信頼性についても取り上げて、解説してもらったらモット素晴らしいと思います。

 何故かといえば、Web上の論文で、人で有効だったと書いてあっても、その情報を信頼するか、恣意性ある情報かは、人を対象とした場合、作為が入り易いからです。

 例えば、著者が指摘しているようにプラセボ効果が30%以上あると言うこと、つまり、“メリケン粉”を飲ませると少なくとも三分の一の人が効く、効くというということです。

 血圧を下げる薬でもプラセボ(偽薬)投与で30%以上の人達に効果ありだとのことはよく知られたことです。

 人を対象とした健康食品・サプリメントなどの有効性調査・研究では、疫学的研究といって、人達を対象にした調査が行われます。

 その研究レベル・方法では、まず、もっとも多いのが、一人でも効いたといった場合に効くも涙、語るも涙の効いた効いたと唱える研究論文や雑誌が多いことです。

 このレベルの情報では、大変低い科学的根拠レベルの情報で、恣意性ある情報の“最たる”であり、ほとんど信頼性はない、著者が指摘する販売元と健康雑誌ビジニスの提灯の持ち合い、共演術が多いレベルです。

 次のレベルが、ある地域を調べて、アンケートや面前調査を行って効く効くとのレベルです。

 例えば、お茶を1日何倍飲むも沢山飲む人はガンが少ないと言ったような情報です。

 次が、コホート研究法と言う疫学的な研究法で、年令、性別、職業などの生活属性を同じようなレベルに整えて、上述したような過去の情報聴取するのではなく、前向き、つまり、その先、数年にわたる調査結果を調べる方法です。

 かなり大勢の統計的な有意な差が出るようなレベルの多人数レベルで調査する必要がありますから、それだけ、有効性の根拠は高くなります。

すでに、最近取り上げましたコレステロールの高低と死亡率について紹介した研究も、コホート法による結果であり、男女間で著しく異なっていると判ります。

 続くのが有効性根拠がもっとも高くなる介入試験で、前向き無作為試験(prospective randomized test)と言って調査条件をコホート研究の場合のように整えて、目的とする健康食品、例えば、指定する量のお茶を飲んでもらってプラセボグループも含めて、多年にわたる前向き、即ち、先行き調査をする試験です。

 言ってみれば、前向き無作為試験レベルまで調査レベルを上げた調査が求められているのです。

 このレベルの調査研究レベルでも、異なった研究者たちによる調査グループ間で異なった結果が出ることも少なくありません。

 多くのよく知られたビタミン類ですら、未だに、ガンや動脈硬化、脳機能の老化などの予防効果ありとハッキリと言い切れる科学的根拠がない理由でもあります。


 また、医療不信、医者不信が、有効性に疑問があり、副作用が無きにしもあらずの民間療法に人々が群がる原因でもあるとの指摘をしています。

 我が国のがん患者の44.6%の人が民間療法をためしている現実は、丸山療法やサルノコシカケなどが国民的“治療薬”となったような伝統的な体質は続いていると言えそうです。

 医者が患者とシッカリ向き合えないのは、お互いに胸襟を開いた会話を避ける体質にあり、医者側から言わしてもらえば、話し合いだけの診療にコスト負担を認めたがらない患者や家族などの社会的体質もあり、医療保険制度にも問題があります。

 ガンや糖尿病などの生活習慣病のみならず、精神的課題の病気治療にあって、話し合いがベストチョイスである病気・病状もあることを認めあう相互努力が乏しいがゆえに、補完代替医療法との認識・理解より、藁をもつかむとの神がかり的・心霊的療法に走らせる誘引ともなっています。


 多くの人達が意味のない有害ともなる重商業主義に踊らされている現実があり、現実的な状況からの救済に蒲谷茂による「民間療法のウソとホント」を、十分に読むことが健康情報の何たるかの現状を知り、役立つ本であることに間違いはありません。


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