「臨床喫茶学」・・レトロ・モダンの喫茶ワールドでライフスタイルを学ぶ・・14
日本の国の成熟とはを考える・・13・人間関係の多様性を問う・・平野啓一郎作「高瀬川」
平野啓一郎の小説に登場する人物や人間関係は、レトロ・モダンな人間関係の多様性や生き方を考える上で、大変勉強になります。
平野啓一郎の若さで、どうして深いレベルからの近未来的な人間観や人間関係を掘り起こせるのかと敬服です。
今回の平野啓一郎について取り上げたいと思うのは、2003年の「高瀬川」、2008年の「決壊 上下」、2009年の「ドーン」、2010年の「かたちだけの愛」ですが、いずれも、読み応えのある今日、未来の人間像や人間関係を考えさせます。
また、2007年の「モノローグ」、「ディアローグ」も、今回は取り上げませんが大変示唆に富んだ話題で、ものごとのとらえ方や生き方を学ぶにはモッテコイの本であり、一読をお勧めです。
「高瀬川」は、若い男女によるセックスが、好きだからだとか、愛しているからとの関係や性愛での肉体関係を結ぶのではなく、コミュニケーション法としての意味で取り上げています。
好き嫌いの愛憎のみならず、若者の欲望を満足するためでもない、人間関係としての会話を楽しんだり、絆を深めるための一法だということです。
仕事上の関係があっても、従来のようなベタベタした関係を絡ませることのない、ごく自然な人間関係の在り様です。
今日の社会では、最早、珍しい関係ではなくなっているように思えてきます。
コミュニケーション法として、茶の湯では、一味同心の絆を深めるために、客人は茶席に入るために武士であっても刀を外に置き、亭主は毒物の含まれてはいないことを示す手法を点前に内包させています。
一碗の茶を喫する小間の茶室は、人間関係を深める密室でもあり、密談のためのコミュニケーションが出来ます。
鎌倉後期から南北朝の時代では、武士や豪族の間で楽しまれた淋汗(林間)茶の湯のように風呂を共にしてお互いが裸になって楽しむコミュニケーション法が盛んだったり、秀吉時代の「ススリ茶」のような一碗を回し飲みするコミュニケーション法も、平野啓一郎の小説が示すセックスを介した人間関係は、茶の湯の一味同心とのコミュニケーション法と共通するものだといえます。
お互いが成熟した人間関係として成り立つコミュニケーション法として素晴らしい!
{高瀬川」の世界も共通します。
個別と共通のCall & Responce、情感と身体の反応、感情の受け答え、肯否の交わり、力は万葉の時代の相
聞歌のやりとりのようです。
二人だけの世界で、情欲的な嫌らしさ、みっともなさもなく、情景が微笑ましく、思わず微笑み笑ってしまうような情景も描かれています。
新しいコミュニケーションとして、愛憎、結婚などとは無縁の新しいコミュニケーションの在り様だと思います。
是非とも一読をおすすめです!!
川の流れが清らであっても
さざ波は立つ如く
歌垣のさざ波が立ち
男女の逢瀬を呼び
相聞の歌が木魂した
時を経て
男女の交わりも多様となり
婚活が求められ !
愛欲もシュールレーの道が開けたよ !
バーチャルの道も開いたよ !
男女の関係も愛憎を越えたのか !
男女の智の交わりの道も開けたよ ! 』