臨床喫茶学・・レトロ・モダンの喫茶ワールドでライフスタイルを学ぶ・・7

 日本の国の成熟とはを考える・・5・・村上隆の日本的未成熟と成熟への挑戦


 美術作家・村上隆が、ルイ十四世が築き、バレーを踊ったベルサイユ宮殿で個展・「MURAKAMI VERSAILLES」(2010年9月14〜12月12日)を開いたことは素晴らしい。

 フランス人にも問題視されて議論を呼ぶほどのインパクトある作品群だったのだと思います。

 私は直接ベルサイユ宮殿で観ることが出来なかったのが残念で仕方がありません。

 グローバル社会に挑戦・越えようとする姿、姿勢には敬服です。

 東京芸大日本画博士として、閉塞感が漂い、安易な既成の因習に安住が出来なくなった習俗的な日本の画壇に芸術とはを鼓舞してもらいたいものです。

 彼には、日本のレトロ・モダンのアート世界をグローバル社会に向かってグローカル(地域性ある地球的視野)文化として認知させようとの意欲が感じられます。

 つまり、日本の未成熟文化の成熟文化としての成長・グロースカル(growthcal)です。

 日本の伝統ある美術史上のハイカルチャーと我が国の前衛性を引き継ぎ、戦後のアニメ、マンガ、フィギュアーなどのオタク、キッチュサブカルチャーとの境界を取り払うべく21世紀に村上隆が提唱したスーパーフラット(superflat)の世界です。

 日本の未来は世界の未来かもと日本の今をスーパーフラットと宣言したのです。

 
 アメリカの原爆「リトルボーイ」を敗戦の象徴として、そのトラウマから解き放たれるように「LITTLE BOY」展《「リトルボーイ 爆発する日本のサブカルチャー・アート」(村上隆編、ジャパン・ソサイアティーイエール大学出版、2005年)》をニューヨークで開催しました。


 既に紹介の東浩紀編「日本的想像力の未来 クール・ジャパノロジーの可能性」(NHKブックス)では、村上隆が「アート界における“クール・ジャパン”の戦略的プロデュース法  Mr.の場合」として参加しています。

 世界に求められる「クール・ジャパン」としてポップ・カルチャーのトライ&エラーを繰り返しながら、作家の希望とマーケットの希望が重なるまでの戦略とその根気強い持続的な努力の大切さについて述べています。

 我が国の敗戦後の日本人の精神構造に取り分け根強く蔓延るが、アートの世界にも根強い戦前も戦後も西欧に劣っている・「西洋に追いつけ、追い越せ」とのコンプレックスの切断への挑戦を説いています。

 東浩紀編の本では、既に、黒沢清監督「トウキョウソナタ」を取り上げていることで紹介したキース・ヴィンセントが、村上隆作品の「ヒロポン」と「マイ・ロンサム・カウボーイ」を大変興味深く話題としています。

 フィギュアー「ヒロポン」(Hiropon、1997年作)は制作集団「ヒロポンファクトリー」(カイカイキキに変更)の名前に基づいているような作品名となっていますが、“このヒロポンちゃんはコカインでもやっている乳母みたいなもの”(ヴィンセント)と乳房からほとばしるお乳の縄で縄跳びをするヒロポンちゃんの姿をしています。

 母性社会に挑戦する意欲がほとばしります。

  フィギュアー「マイ・ロンサム・カウボーイ」(My Lonesame Cowboy,1998年)は、“エルビー・プレスリーのように股を開いて立ち上がり、自分の精液を投げ縄にして今にも種馬を捕まえそう”(ヴィンセント)な自信に満ちた表情と姿をしています。

 敗戦後のアメリカによる去勢状態の日本の「未成熟」に挑戦するような欲望に溌溂たる歓喜の喜びを手の中の男根パワーから精液をほとばしらせる自信に満ちたマスターベーションの快感姿で唯我の世界を示しています。

 アメリカの開拓者精神者のシンボルたるカウボーイをパロディー(Parody)としているのです。

 村上隆が目指す「成熟」とはが問われている作品となっています。


 村上隆は、戦後の敗戦によるコンプレックスから立ち上がるために、憲法九条の改訂による国家的な戦争で戦う可能性を持った「普通の国」になると言う西欧に毒されたような“成熟”よりも、「スーパーフラット」の世界を目指して日本人・リトルボーイアメリカのタイムズ(TIME))誌「世界で最も影響力のある100人ー2008年度版」(The World's Most Influential PeopleーThe 2008 TIME 100)に氾濫するような「成熟」を目指していると私は思います。

 村上作品には、「宇宙戦艦大和」、「鉄腕アトム」、「ガンダム」、「新世紀エバンゲリオン」や「風の谷のナウシカ」などの作品のように暴力たる戦いや戦争を直接表現とはしていません。

 前回に取り上げました奈良美智と共通する視点です。

 奈良美智村上隆も、1970年の大阪万博以後の大澤真幸の言う「虚構の時代」に成長し、2001年のアメリ同時多発テロ以後の「不可能性の時代」に活躍する『多様な価値観』を内包する美術作家なのが素晴らしい。

 臨床喫茶学の必要条件を満足する日本が目指すべき『未成熟』・『成熟』をしています(「信天翁喫茶 入門 益荒男が茶の道」山中直樹著、アマゾン、Dr.BEAUT・ソフィーリッチでネット販売中。アップルのアップストア(App Store)の電子書籍としても販売している)。


 『  SuperFlat Growthcal

   原子爆弾リトルボーイのコードから抜け出そう!

「母性社会」の『ヒロポン』をスーパーフラットして

  カウボーイの去勢トラウマを投げ縄でス−パーフラット!

  お子ちゃまのままの駄々っ子をスーパーフラット!!

  生きるはロンサムだ!!!

  自分カワイの自己愛の幻想をスーパーフラットして

  近代的自我(modern self)の

  「未成熟」・「成熟」の界を紛らすぞ !

  日本の未来は世界の未来なのだ!!        』