オタピー茶の湯；信天流健康で文化的な生活・８

　オタピー茶の湯；　日常茶飯の「こころ」・・９２

　俯瞰思考；　価値性の幻想；　ハイカルチャー、ポップ、キッチュ、サブカルチャーとの界を紛らかす・・５０

　Simple Little Pleasure Following One Another Day・・３

　日常茶飯の信天流喫茶と心の絆です。

　1月17日の午前中から我が家にて信天流オタピー茶の湯のニ碗を楽しみました。

　心の絆あふれるレトロモダニズムに適うお菓子が、Simple Pleasureでした。

　曰く付きのお菓子は次のようです。

　先週には、思いがけなくお友達の五島列島・平島出身の山田武雄から故郷から送られてきたアオリイカの半生干しのスルメをもらいましたので、まずは一服目のお菓子としました。

　暖かい内に食べなければと茶碗にお湯を注いで暖めている間に、速やかな火あぶりとしました。

　半生スルメの旨みを噛みしめながら昔の一夜干しのスルメの感動を思い出したのです。

　20年以上の前のことですが、若い風俗関係に働く娘さんが入院した時、鳥取から心配のあまり訪ねてきた母親が、「暖かく診て頂いて娘は喜んでいます。貧乏だからこんなものしか上げられません」と一夜干しスルメの一枚を取り出し、差し出されました。

　娘を思う親心が伝わってきて、尊いお宝の輝きに思わず手を出して、ありがたくいただいた記憶です。

　私には、もう一つ通俗的な価値観を越えた「麁相の心」と「心の絆」を感じて受け取った思い出があります。

　家族の生活を支えるためにゴルフ場でのキャディーを仕事としている奥さんが主人のために、お金に変えたかったに相違ないロストボールを「受け取ってください」と差し出されたのです。

　苦しい生活条件にありながらも、家族との絆、自立心と誇りを必死に訴えている心と姿勢の「清ら」と「美し」に打たれて、私は、基本的にはゴルフはアメリカなどしか遊ばないのですが黙って、気持ちのこもった贈り物を思わず受け取りました。

　ニ服目としては自家製の富士柿の干し柿としました。

　その干し柿にも謂れがあるのです。

　ご存知とは思いますが富士柿は大変大きな渋柿です。

　その富士柿は昨年の晩秋に、わが生まれ故郷の碧南出身のお友達・石原敏男からいただいたのです。

　その柿の種から富士柿を育てんと、干し柿にして、その種をとることを条件としていました。

　妻が干し柿を作る役割となったのですが、既に紹介しました我が信天流喫茶のための陶工・陶芸家の加藤敬也の奥方から、以前に、富士柿の干し柿を作るために軒に吊るしていたら、大きくて重いためか、蔕から離れて全部落ちてしまったと聞いていました。

　そこで、我が家にても如何なるかを観察せんと北側の玄関の軒に注意深く吊るしました。

　加藤敬也・奥方から聞いていたように、次第に蔕と実果とが離れて、今に落下しそうになったではありませんか。

　そこで、平たい竹笊に移して、寒風にさらし続けながら、せっせと裏返したところ、飴色の美しい見事な干し柿が出来上がりました。

　富士柿の送り主・石原敏男に見せて、これでよろしいでしょうかと許可を得ようとしましたら、種も含めて出来上がりは結構と認められました。

　我が家でも、富士柿の実生を塾りと育てようと、一個の干し柿から一個ほどしか得られない種を大切に集めています。

　利休時代の茶の湯のお菓子は今だ今日のような砂糖を用いた生菓子などではなく、干し柿、栗などのみならず、スルメや昆布なども用いられていたに相違ありません。

　それ故に、今回のアオリイカのスルメや富士柿の干し柿は、友人との心の絆のみならず、まさに、レトロモダンのお菓子に適うことになります。

　
　茶を点てるにあたり、茶入れとしては開化堂の茶筒（銅製）を用いて、お茶は陽光園のお濃茶「龍華の昔」としました。

　茶碗の一服目は加藤敬也作の銘「茶食一如」、ニ服目は銘「茶食」としました。

　何時ものように畠山茶吉由来の囲炉裏風の大きな楓の根っこの大火鉢に湯沸釜をかけて、裏千家の手前を基本としながら信天流オタピー茶の湯点てで楽しんだのです。

　夕方には、日本画家・木村光宏が訪ねてきましたので、名古屋・住吉小路の知る人ぞ知る西欧風レストランの「Ｃorrie's Bistro」で美食をしながらの日本芸術にあってのレトロモダニズム談議を楽しみました。

　また、「芸術家」と「職芸家」との相違が話題でした。

　オーナーシェフ・郡山義浩が自己主張をする「Corrie's Bistro」は、レトロモダンな気取らない雰囲気が漂い、こだわりの西欧料理に日本食を感じさせて、料理は芸術だと判る美味を堪能したのです。

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