オタピー茶の湯文化は、レトロモダンのアートワールド・・２

　オタピー茶の湯；　日常茶飯の「こころ」・・８４

　俯瞰思考；　価値性の幻想；　ハイカルチャー、ポップ、キッチュ、サブカルチャーとの世界を紛らかす・・４２

　オタピー茶の湯は信天流喫茶で、「麁相」の心をキーワードとするレトロモダニズム（Retro Modernism)のアートワールドなのです。

　すでに述べてきましたように、偽りのない慎み深く奢らない心で高慢を戒め親切に人と交わり、創意を尊ぶ喫茶を介した人間味ある「信頼、絆、つながり、肌触りの人間関係」を大切とします。

　古きには雁字搦めになることなく、過去には素直に学びながら、創造性を重んずるのです。

　「直心」、「得心」、「作為・創意」を大切にしながらの人とのつながりでは、「権力」、「金力」、「愛」による習俗を越えた日常茶飯の人間関係を楽しむのです。

　信天流喫茶・オタピー茶の湯の「麁相」の心について、レトロモダニズム的に言えば、次のようなグローカル文化としての必然性があります。

　直心と得心ある理解と作為・創意のためには、まず、日本の国、国家と天皇を中心とする成り立ちを神話や伝説を排した歴史的事実としての理解が大切なこととなります。　　

　私たちの生活する現代日本は地球環境の歴史的変化に伴なって、網野善彦（「日本社会の歴史」、岩波新書）が指摘しているように、アジア東部との陸橋をなして日本列島の形成となったのです。

　その陸橋を介した人類の足跡によって、大王・天武による「現御神」の宣言となり、天皇の称号が用いられ始めるも、公式には天武の死後の西暦６８９年に飛鳥浄御原令を施行して、国号を『日本』として、大王の称号に変わる『天皇』がはじめて制度的に定められて、日本国の誕生となりました〈網野善彦；「日本社会の歴史」（岩波書店）、『「日本」とは何か』（講談社）〉。

　そして、初代天皇位についたのは、６９０年の女帝たる持統天皇と言え、次第に国政の体制が整いはじめたのです。

　対外的な国名の変更認知は、７０２年の則天武后によっての「日本国は倭国の別種」、「倭国自らその名の雅ならざるを憎み、改めて日本と為す」（「旧唐書」）に始まるのです。

　　その日本国誕生に遡る陸橋の東部と西部からの人々による縄文から弥生文化時代では、列島西部の文化は、“すべてが単純・簡素化の方向に向かっていくところに特徴がある”（網野善彦・「日本社会の歴史」）とあります。

　その特色は、列島西部から縄文文化中心の東部に農耕社会が発展をはじめて、次第に東部に普及していくことになったのです。

　言ってみれば、日本国誕生前の我が列島では、既に、「単純・簡素化」思想が芽生えていたことになります。

　「単純化・簡素化の方向」は、その後の我が国の文化的特徴となっていると思うのです。

　例えば、源氏物語絵巻での人の心情表現にあっての「引き目鉤鼻」に加えて「口」でのワズカで微妙な白描的線描の差によって表されているところにも伝わっています。

　その心情描写は、今日のモダンアーティスト・奈良美智による未成年（adorescent）な少女や犬の表現に私淑していると感ぜられます。

　和歌や俳句での限られた形式による言語表現での心情表現も同様と言えます。

　表にあらわれた単純・簡素化の方向は、その背景や裏にある複雑さを内包した表現となっているのです。

　茶の湯は、日常茶飯の衣食住を含む生き方、人と人とのコミュニケーションの在り様を単純化・簡素化した必要最低限の生活総合文化として昇華した様式と言えます。

　正に、「麁相」の心、岡倉天心の「不完全性の美」（茶の本）、赤瀬川原平の「マイナス思考・負の思想」（芸術原論）を内包する侘び・寂び文化に通ずる我が国の今日に及ぶグローカルな文化的特徴となっていると判ります。