日常茶飯の「こころ」・・77

 俯瞰思考; 価値性の幻想; ハイカルチャー、ポップ、キッチュサブカルチャーとの世界を紛らかす・・35

 茶の湯夏目漱石・・2


 夏目漱石の『こころ』では、私が受験時代に読んで、今も、はっきりと記憶しているのは、“先生が道の端で、裾をまくって小便をした”でした。

 「わたしは淋しい人間です」との記述があることに、特別の認識はありませんでした。

 漱石にあっての“淋しさ”については、『私の個人主義』での言及が注目でした。

 しかし、今回の姜尚中著のNHKのテキストと、近著の『悩む力』(集英社新書)での漱石の言う“淋しさ”について、『こころ』での指摘でした。

 そして、今回、『こころ』を再読しましたら、早々に、その文章(pp.22〜23、岩波文庫)があることを知りました。

 『私の個人主義』の講演が学習院でなされたのは、小説『こころ』を書き上げた直後のことでしたから、漱石は、既に、その “淋しさ”について、「東洋味が加わった個人主義」についての認識を持っていたことになります。

 漱石は、当時の学習院に取って、問題となりやすいのだとの認識から、「金力」、「権力」についてを話題の中心においたのだと推定できます。

 『こころ』を読むと、この世で、人を縛る三大ファクターは、上述の「金力」、「権力」に加えて、「愛」だとなります。

 私も同感です。

 しかし、姜尚中教授も、漱石は、「愛」より、「友情、絆、人としての信頼」が、大切だとの主張をしていると判ります。

 「愛」は、閉鎖的な人間関係を基本とするが、「信頼感ある人間関係の絆」は、柔らかいモラトリアルでオープンな人間関係としての広がりを持ちます。

 つまり、「愛」の典型的な形たる、夫婦やステディーな男女関係は、お互いがセックスをパラメータに独占的な関係にあることを求めます。

 その「愛」には、「金力」や「権力」と共通、混合がなされて、対等の人間関係を制限するベースがあります。

 それ故に、愛欲や結婚関係にあっての人間関係には、情感、情念も含めた変遷や不確定性、不安定性があり、数々の打算も含めた悲劇や喜劇が発生するのです。

 加えて、セックスには、あらゆる生物に共通する種の保存としての人類生存のための役割があるのです。

 そこに、キリスト教や仏教などの宗教や社会が「セックス」を正当化するために、夫婦関係やステディーな関係を「愛」を介した社会的様式として、普及する装いとなっているようにも思えます。

 しかし、人類には、種の保存のために、一夫一婦制のみならず、一夫多婦性、多夫一婦性の形が実在しています。

 そこには、「愛」は必要条件ではないと判ります。

 「愛」は、社会的な「セックス」を正当化するための幻想に過ぎないと思えてきます。

 そして、今や、「セックス」は、平野啓一郎が小説『高瀬川』で言及しているように、「愛」をベースとせずに、人間関係のコミュニケーションの方法ともなっているのです。

 「あなたは私のもの」との「制約性のない」、友人同士、まっとうな人間同士の男女平等の関わりの中に、セックスが位置づかれています。

 そこには、文化的な「セックス」を正当化するために、「愛」を持ち出す必要も無く、「人間関係の絆」としての意義があるとなります。

 一方、「人間関係の信頼性ある絆」は、相手との関係に自由さと多様性を内包していることが必要条件なのです。


 「個人主義」の基本たる、人それぞれの「価値観による選択の自由」をお互いが認め合う、相手との目線を同じにした(対等性)とお互いが自立性ある「信頼の絆」がキーとなります。

 とどのつまり、責任と義務を自覚した社会性を含む「個人主義」の人間関係にあっては、漱石の指摘する、必ずしも個人の自由と自立性を保障しない徒党性は、フランスのサガンが、18歳で『悲しみよ今日は』で指摘したように、“群れていても孤独”と“淋しさ”から逃れられないのです。

 そして、姜尚中教授の指摘する、「セックス」を含む人間関係にあって、「自我」と「自己チュー」とは区別する必要があるのです。

 「セックス」は、お互いの「自己チュー」の「自己愛」の幻想に過ぎなかった?!!


 「人間関係の信頼性ある絆」には、漱石が指摘する「東洋味が加わった個人主義」があると思います。


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