頤醫のグローカルカルチャー志向・・12

    「90億人の食」(NATIONAL GEOGRAPHIC 90億人の食 地球と食材の未来)から・・11・・「食べる」は喜びの源


 「National Geographic」が特集してきた「90億人の食 地球と食料の未来」の最終回。
 今回は、「共食」の喜びをテーマにしている。
 「一緒に食べると親しくなれるのは何故だろう?」・・「人は食べ物を通じて、友をつくり、愛を育み、自分の幸せに気づく」として世界各地の「共食」を紹介している。
  豊かな国であれ、貧しい国や地域であれ共食の喜びがあることが判る。
 アフガニスタンのバーミアン郊外で女性たちが食べながらおしゃべりを楽しんでいる姿は微笑ましい。
 入院患者の食の喜び、ファーストフード店での絆を深める食、僧侶たちの楽しそうな食風景などに加えて、食前の祈りをささげる家族の姿も映しだされている。
 「共に作り共に食べる」メキシコのある地域での町全体の取り組みを紹介している。
 「食べ物と信仰が人と人とをつなぎ、暮らしを豊かにする」様子を紹介している。
 共食の幸せは、各人各様で楽しめるのだと判る。
 どこかの国でありがちな、「こうでなければいけない」と他の人たちが押し付けてはいけないのだ。  


 しかし、残念ながらわが国・日本は取り上げられていない。
 我が国でもお祭りでの町や村全体の絆を深める共食の催しはある。
 縄文の時代から集落全体で採集・狩り・漁撈を行い、共に作り共に食べる生活は始まっている
 縄文時代は1万年以上の長きにおよぶ集落間の殺戮がない平和な時代を営んだ。
 縄文後期になると東北・北海道地域で今日多数発掘されている環状列石遺跡は埋葬儀式が共同で行われていた可能性を示し、墓の遺跡が残っている。
 日頃の生活環境から離れた象徴的で富士山のような対称性のある山がみられる高地に遺跡はきずかれているのだ。
 当時すでにそうした山に沈む太陽を観察して冬至夏至を知り、季節の変化と食材となるクリなどの堅果類、ヒエやアワなどの雑穀の実るのを知り、鹿・猪などの動物の狩りや漁撈の時期を知ったのだ
 また、日時計による一日の時間の移ろいも判断していたと判る。
 環状列石は多数の集落が協同して築き、冬至夏至の日に美しく象徴的な山頂から沈む夕陽の時間には自然への拝礼の儀式が行われ、直会・共食による絆が深められていたのだと考えられる。
 
 三世紀の初めごろの卑弥呼は巫女達と直会・共食を大切にしており、卑弥呼はそうした象徴だったのだ。
 直会・共食儀礼は今日では形を変えて続いているとも言える。
 直会・共食には地域地域の産物を料理して供えられ、共食を楽しんだ。
 しかし、明治の初期には神祇制度の改革が行われて、国家権力によって、古儀を顧みることなく全国的に神饌はすべて生饌で供えると定めた。
 備える生饌も米などと一律に規定された。
 地域の民衆の人たちが、土地土地での産物を備えて感謝する気持ちを削いで、形ばかりの今日的儀式的形骸化の誘因となった。
 調理・加工した熟饌を備えなければ、直会・共食の意味は大きく変わってしまったのだ。


 共食を身分や格式を離れて楽しんだのは、南北朝足利時代ではバサラ大名として有名な佐々木道誉が行ったような闘茶のような遊侠の宴がその代表だ。
 室町幕府の末期・義政の時代になるとワビ茶の始まりと言われる村田珠光が「心の文」を送った古市播磨は当時、清濁併せ持つ土豪で「淋汗茶湯」と言われる風呂に入りながらの仲間内の宴を開いて戦国の動乱期の絆を深めていたのだ。
 我が国の人たちが、最も、元気に輝いた時代だと思う。
 今日的に言えば、尾田栄一郎の「ワンピース」の麦わら一味が楽しむ宴だ。

 
 そうした共食の宴から精神性を深めた茶の湯がワビ茶の原点と言ってよい。
 饗宴から質素な庵で楽しむ少人数の共食だ。
 狭い空間に膝を突き合わせた信頼の醸成だ。
 当然のことながら相互不信を排した密談をするほどの絆の極致と言える共食の場と言える。
 まさに、茶の湯は共食が文化的昇華をした人間社会の絆文化のアート化したものだ。
 しかし、ワビ茶の精神を内包した茶の湯文化も今日では形骸化して共食の心は失われたイベント的“茶会”が氾濫しているが、それでも仲間内の喜びがあれば、それはそれで今日的人間関係を意味しているようにも思える。


 「一緒に食べると親しくなるのはなぜだろうか?」の特集に、「日本の共食文化」が何も取り上げられていないのは「何故だろうか!?」と考えて見なければならない!!



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